コラム

小売業の人材コストを徹底比較|直接雇用と人材派遣、総コストで見る最適な人材戦略

「直接雇用と人材派遣では、結局どちらの方がコストを抑えられるのか?」

小売企業の人事・店舗運営に携わる方から、よく寄せられる質問の一つです。

派遣料金は時給で見ると、直接雇用の給与より高く見えることがあります。しかし、人材を1名確保して働いてもらうまでには、求人広告、採用活動、選考、雇用手続き、社会保険、教育など、給与以外にもさまざまなコストと社内工数が発生します。

さらに小売業では、必要な人員を確保できなかった場合に、店長や社員の残業、店舗運営への影響など、目に見えにくいコストも発生します。

そのため、人材コストを考える際に重要なのは「時給が安いか高いか」ではなく、採用から就業、定着までに企業が負担する総コストと、店舗運営への影響まで含めて比較することです。

本記事では、流通・小売業界の人材派遣に15年以上携わってきた株式会社エムアールエスの実務経験を踏まえ、直接雇用と人材派遣のコスト構造を比較します。

さらに、派遣活用が有効になりやすいケースや、経営・人事・店舗運営の視点から人材戦略を判断するポイントについて解説します。

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1.小売企業が「時給」だけで人材コストを比較すると危険な理由


直接雇用と人材派遣を比較するとき、

・直接雇用:月給・時給
・人材派遣:派遣料金

だけを見ていないでしょうか。

例えば、派遣料金が時給2,200円、直接雇用の時給が1,500円なら、「派遣の方が700円高い」と考えるのは自然です。

しかし、直接雇用では給与以外にも、

・求人広告・採用活動の費用
・応募者対応や面接などの人事工数
・雇用契約・労務手続き
・社会保険等の事業者負担
・入社後の教育・OJT
・早期退職時の再採用コスト

などが発生します。

一方、人材派遣では、派遣料金の中にスタッフの賃金だけでなく、派遣元が負担する社会保険等の費用や管理・運営に必要な費用などが含まれます。

つまり、企業が比較すべきなのは単純な「時給差」ではありません。

「必要な人材を1名確保するために、企業が最終的にいくら負担しているのか」

という視点で比較することが重要です。

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2.直接雇用と人材派遣の総コストを比較する


直接雇用と人材派遣では、人材を確保するまでの企業側の負担が異なります。

直接雇用と人材派遣の比較
比較項目 直接雇用 人材派遣
人材募集自社で実施派遣会社が実施
応募者対応自社で対応派遣会社が対応
採用・選考自社で実施派遣会社側で人材を確保・提案
雇用契約自社とスタッフが締結派遣会社とスタッフが締結
社会保険等条件に応じて自社負担原則として派遣会社が対応
業務教育自社で実施自社で実施
欠員発生時再度採用活動が必要派遣会社に補充・交代を相談
人員調整自社採用・雇用管理が中心契約条件の範囲内で調整を検討



このように、人材派遣を利用すると、採用や雇用管理に関する業務の一部を外部化できます。

ただし、実際の費用負担や業務範囲は、契約内容、雇用条件、職種、勤務時間などによって異なります。

そのため、派遣料金だけを見るのではなく、自社側で発生している採用・管理コストと合わせて比較することが必要です。

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3.直接雇用と派遣のコストをシミュレーションする


ここでは、採用初年度で1名あたりのコストを一定の条件を設定して比較します。

計算条件
・直接雇用:月給28万円
・年間給与:336万円
・賞与:64万円
・法定福利費等:約60万円
・採用費:100万円
・社内対応工数:15万円
・派遣:時給2,200円
・月間稼働時間:160時間
・年間稼働時間:1,920時間

直接雇用の場合
年間給与336万円に、賞与64万円、法定福利費等約60万円、採用費100万円、社内対応工数15万円を加えると、
初年度の試算額:約575万円
となります。

派遣の場合
時給2,200円、月160時間で計算すると、
2,200円 × 160時間 × 12か月
年間422.4万円
となります。

直雇用と派遣の差額は
575万円 − 422.4万円
152.6万円
となり、初年度の差額は約152万円、割合では約26%です。


ただし、これはあくまで株式会社エムアールエスが設定したモデルケースです。
「派遣なら必ず26%安くなる」という意味ではありません。

実際のコストは、

・給与・賞与
・採用費
・社会保険等
・教育工数
・派遣料金
・勤務時間
・契約期間
・職種
・地域
・必要なスキル

などによって変わります。


*厚生労働省「雇用動向調査」等の公的データが示す通り、小売業は離職率が高く継続的な採用活動が必要とされる背景があります。採用1名あたりのコストについては、リクルート就職未来研究所「就職白書」等の調査により、全国平均で約100万円(中途約103万円/新卒約94万円)と試算されています。

https://www.saiyo-doda.jp/guide/kihon/recruitment-unit-price

重要なのは、この計算方法を自社の条件に置き換え、直接雇用と派遣の総コストを比較することです。

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4.「採用できないこと」で発生するコストまで考える


小売業では、採用コストだけでなく、必要な時期に必要な人数を確保できないこと自体がコストになる場合があります。

例えば、レジスタッフが不足すると、

・店長や社員がレジ応援に入る
・発注や売場管理など、本来の業務が後回しになる
・営業中の人員配置が不安定になる
・残業が増える
・店舗サービスの品質に影響する

といったことが起こる可能性があります。

ここで重要なのは、「採用費がいくらだったか」だけではありません。

例えば、

店長が採用活動に使った時間

エリアマネージャーが欠員対応に使った時間

社員の残業時間

欠員によって発生した店舗運営上の負担も、人材確保を考える際のコストとして捉える必要があります。つまり、人材派遣の費用対効果は、派遣料金と直接雇用の給与との差額だけで判断するのではなく、採用・教育・管理にかかる総コストと、欠員によって発生する店舗運営への影響まで含めて考えることが重要です。

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5.直接雇用と人材派遣をどう使い分けるべきか


ここまで見ると、「それなら派遣を使えばよい」と考えるかもしれません。

しかし、人材派遣はすべての採用を置き換えるものではありません。

重要なのは、人材の役割や必要な期間、採用状況に応じて使い分けることです。

直接雇用が適しているケース
・長期的に育成したい人材
・自社の中核を担う人材
・将来的な管理職候補

派遣が有効になりやすいケース
・急な欠員が発生した
・採用活動をしても応募が集まらない
・店長やエリアマネージャーが採用業務に時間を取られている
・ベテランスタッフの退職による現場力低下を防ぎたい

つまり、「直接雇用か派遣か」の二択ではありません。

業務・期間・人材・店舗の状況に応じて、複数の人材確保方法を組み合わせることが重要です。

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6.小売企業で人材派遣が有効になりやすい6つのケース


② 店長・エリアマネージャーが採用業務に追われている
求人掲載、応募者対応、面接調整、入社手続きなど、採用には多くの業務が発生します。
店舗運営を担う社員が採用業務に多くの時間を使っているのであれば、採用業務の一部を外部化することが、店舗運営の生産性向上につながる可能性があります。
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③ 急な退職・欠員に対応したい
店舗スタッフが突然退職すると、残った社員への負担が増えます。
欠員が長期化すれば、残業増加や店舗サービスへの影響につながる可能性もあります。
こうした場合、派遣を人員確保の選択肢の一つとして検討できます。
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④ 教育負担を抑えたい
採用後の教育には、店長や社員、先輩スタッフの時間が必要です。
派遣でも店舗固有のルールや業務についての教育は必要ですが、経験やスキルを踏まえた人材の提案を受けることで、採用から就業開始までの負担を軽減できる可能性があります。
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⑤ 定年退職予定のベテラン人材を継続活用したい
長年勤務したスタッフが定年を迎えると、業務ノウハウや店舗特有の知識まで失われることがあります。
本人の希望や就業条件、法令、社内制度などを確認した上で、派遣という形で継続して就業する方法を検討できるケースがあります。
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⑥ 店舗ごとの人員需要に差がある
「A店は人手不足だが、B店は充足している」というケースもあります。
店舗ごとに採用力や労働市場が異なるため、全店舗で同じ採用方法を採用するのではなく、店舗特性に応じて人材戦略を考えることが重要です。
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7.【実例】定年退職者3名を派遣スタッフとして継続活用


株式会社エムアールエスでは、定年退職を迎えるスタッフについて、本人の希望や条件を確認した上で、派遣スタッフとして継続して就業するケースがあります。

実際に、40年以上にわたって店舗で勤務してきたスタッフ3名が定年を迎えた際、企業側と本人双方の強い希望から、派遣スタッフとして継続して勤務いただいた事例があります。

この3名は、長年にわたって店舗のレジ業務(サービスカウンター含む)に携わってきた熟練スタッフでした。そのため、派遣登録などの必要な手続きを除けば、改めて実務教育を行う必要はほとんどありませんでした。

店舗の業務フローやレジ業務、接客、店舗独自ルールなどを熟知しており、現場で「分からないことがほとんどない」と言えるほど経験を積んだ人材だったためです。

派遣スタッフとしての手続きが完了した後は、店舗側でシフトを作成し、そのまま即戦力として勤務を再開することができました。

店舗側にとっても、40年以上勤務してきた熟練スタッフ3名に代わる人材を新たに確保し、一から教育することは容易ではありません。定年によって3名が一度に現場を離れることになれば、採用活動だけでなく、新たなスタッフへの教育など、店舗側には大きな負担が発生することが予想されました。

今回、派遣という形で継続して勤務していただくことで、長年培われた店舗業務の知識や経験を失うことなく、店舗側も人材不足を回避することができました。

一方、本人にとっても、長年慣れ親しんだ職場で、それまで培ってきた経験を活かしながら勤務を継続できるというメリットがありました。さらに、本人からも金銭面で充実したと喜んでいただいています。

この事例が示しているのは、定年退職が必ずしも「熟練人材との別れ」を意味するものではないということです。
もちろん、実際の活用にあたっては、本人の希望、就業条件、契約内容、派遣に関する法令・制度などを踏まえて、個別に判断する必要があります。

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8.経営層・人事部長・店舗運営部長が判断すべき5つのポイント


人材派遣を検討するとき、「派遣料金が高いか安いか」だけで判断するのではなく、次の5点を整理してみることをおすすめします。

① 採用コスト
1人採用するために、求人・採用活動にいくら投資しているか。

② 社内工数
人事、店長、エリアマネージャーなどが、採用や教育にどれだけ時間を使っているか。

③ 欠員による機会損失
人員不足によって、店舗運営や本来の業務にどのような影響が出ているか。

④ 人材定着
採用しても早期退職が発生している場合、採用・教育費が繰り返し発生していないか。

⑤ 人員需要の変動
年間を通して一定の人員が必要なのか、それとも繁忙期、新規出店、改装などによって需要が変動するのか。

この5点を整理すると、自社にとって直接雇用と派遣のどちらが適しているのか、あるいは両方を組み合わせるべきなのかが判断しやすくなります。

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9.エムアールエスが考える、小売企業の人材戦略


株式会社エムアールエスは、流通・小売業界に特化して15年以上、人材派遣を中心とした人材ソリューションに携わってきました。

現在、75事業所の現場支援と、350名を超えるスタッフの育成・就業支援に携わっています。

私たちが大切にしているのは、単純に「人を紹介する」ことではありません。

店舗ごとに異なる、

・欠員状況
・採用難易度
・営業時間
・必要なスキル
・現場の教育体制

などを踏まえ、

「どの店舗に、どのような人材を、どのタイミングで配置するのが最適か」

という視点から人材活用を考えることです。

直接雇用が適している人材、派遣が適している人材、既存スタッフを継続活用した方がよいケースなど、企業によって最適な方法は異なります。

だからこそ、派遣ありきではなく、店舗運営と人材コストの両面から、自社に合った人材戦略を考えることが重要だと考えています。

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10.自社の「総人材コスト」を一度整理してみませんか?


もし現在、

・求人を出しても応募が集まらない
・店舗の欠員が慢性化している
・店長・エリアマネージャーが採用に時間を取られている
・採用しても早期退職が多い
・定年退職者の経験を継続活用したい
・店舗ごとに人員不足の状況が違う
・現在利用している派遣の費用対効果を見直したい

といった課題を抱えているのであれば、一度、自社の「総人材コスト」を整理してみてはいかがでしょうか。

見るべきなのは、給与や派遣料金だけではありません。

採用・教育・管理にかかるコスト、社内工数、欠員による影響まで含めて比較することで、自社にとってより合理的な人材活用方法が見えてくる可能性があります。

株式会社エムアールエスでは、流通・小売業界の人材派遣に関するご相談を承っています。

「派遣を使った方がいいのか分からない」、「自社の派遣活用が本当にコスト削減につながっているのか確認したい」という段階でもご相談いただけます。

貴社の店舗数や人員状況、採用課題などをお伺いした上で、派遣活用が適しているケース、直接雇用が適しているケースを含め、最適な人材活用方法をご提案します。



【無料相談・資料ダウンロード】

「直接雇用と派遣、どちらが自社に適しているか分からない」という段階でも相談可能です。


https://mrs-os.co.jp/contact/

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執筆・編集


H・O
株式会社エムアールエス マーケティング戦略課 主任

プロフィール
小売業で30年のキャリアを持ち、エリアマネージャーとして多数の店舗管理を主導。経営会議への参画や全社的な販売計画書の策定を通じて、店舗現場から経営戦略まで幅広く精通する。現在は流通・小売業界に特化した人材ソリューション事業にて、店舗運営支援や人件費・採用適正化の分析・執筆を担当。現場視点と経営視点を融合させた実践的な情報発信を行っている。

主な支援先
国内の大手・中堅スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター、百貨店内小売店、アパレルショップなど


【会社概要】

https://mrs-os.co.jp/

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